ケニアで4つのタンデム世界新記録!

今年1月、フランス人パイロットのミシェル(ティティ)・マッケと妻のブランディーヌがケニアでタンデム世界記録に挑戦。見事4つの世界記録を更新した。
今回「この冒険の記録を、日本のパイロットにも共有してほしい」とティティからレポートが届いたのでご紹介したい。

PWCをはじめとするトップレベルのコンペで活躍してきたティティは、10年程のブランクを経て昨年ケニアのプレPWCでコンペに復帰。大会後には妻と共にケリオ渓谷を訪れ、タンデムで100kmアウト&リターン速度の世界記録を更新していた。

そして今年、2度目のケニア滞在。土地も気候にも慣れており準備は万端で、 目標は明確だった。それが、タンデム世界記録を複数樹立すること。

グライダーは、前回はオノラン・アマールから借り受けたスイフトマックスを使用していたが、今回はオゾンが、スイフトマックス2のプロト機を提供し、そのテストを兼ねてフライトすることとなった。

現地入りしてからは気象条件を見極め、フライト計画を練る。頼りになる機体、信頼し合えるパートナー、そして訪れた絶好のコンディション予報――すべてが揃った。

今回の滞在中、2人は8本のフライトを行い、そのうちの3本で4つの世界記録を樹立した。

1本目:100kmアウト&リターン速度(1月23日)

これは自身が樹立した記録をさらに塗り替える挑戦。「昨年のフライトではいくつかのミスを犯していたので、それを修正することでさらに記録を更新できることはわかっていた。そこで戦略を練り直して臨んだ」とティティ。
結果、昨年より時速1km以上速い、平均時速35.94km/hを達成した。
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2本目:25kmFAIトライアングル速度(1月31日)

今回のチャレンジ使用したのはOZONEの最新タンデム機スイフトマックス2。

この記録への挑戦は当初の予定にはなかったものだ。しかし、100kmアウト&リターンフライトの後、体調不良と不安定な天候により飛べない日が続き、残りの滞在日数が減っていく中、ならば強風を利用し「短距離・高速」での記録挑戦を決意。

当日は、アゲインストとなる最後のレグで風向きが変わり、サイドの風となるという幸運にも恵まれ、25kmFAIトライアングルを約40分でフライトし、平均時速39.82km/hで記録達成! 前記録の時速29.52kmから大幅に縮めることができた。
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3本目:申告距離、アウト&リターンフリーディスタンスの2種目同時達成!(2月1日)

ついに待ち望んだ気象条件が揃い、距離記録への挑戦だ。「精神的に追い込まれる場面もあったが、妻の励ましに支えられ、気力で乗り切ることができた」とティティは振り返る。

「午前7時30分、ニャル(Nyaru)からテイクオフ。 最初の40kmは稜線に沿ってただひたすらリッジで進む。1度も旋回することなくただまっすぐ、ウォームアップのようなひとときだった。

最初の鬼門は、稜線から次の台地へのジャンプ。稜線の高さはわずか200m、早い時間でサーマルは非常に弱いが、無事に台地に取り付いた。
そこからは、山々の連なりが続く本格的なセクション。北~北東風を正面に受けつつも、大きく強いサーマルに助けられ、何とか前進。

しかし、次の峠を渡るのが困難だった。「諦めないで、きっとまだいける」パッセンジャーである妻の励ましに背中を押されて、2人で粘り続けた。その結果、幸運にも強いサーマルに当たり上昇。平均速度を維持するために途中で離脱し、そこからはフォローを背負って一気にスピードアップ。

再びテイクオフの稜線に戻ってくると、この40kmはまるでご褒美のような快適な滑空。ただし油断は禁物。記録を証明する最後のバリオビーコン通過までは気が抜けない。

実は数日前、記録達成まであと一歩という17km手前でサーマルが突如売り切れとなり、涙を飲んだ時の悔しさが脳裏をよぎる。しかし今回は、サーマルはまだ続いていた。申告していたゴールを通過は、ライブトラッキングを見てくれていた家族とビデオ通話で共有した。歓喜と涙が一気に溢れた瞬間だった。

そこから宿までの48kmをさらに飛び、僕たちは8時間46分のフライトを締めくくった。
200kmアウト&リターン速度記録は、時速0.5km足りず更新は叶わなかったが、悔しさよりも喜びと感動が胸に残った。記録より大切なのは、目に焼きついたケニアの風景と、空の中で共有した感情だと僕は思う」。
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感謝とともに振り返る偉業

こうして4つの世界新記録更新を達成したティティだが、「すべてはチームワークのおかげ。ひとりでは何もできなかった」と語る。OZONEチーム、そして妻への感謝を何度も口にした。
「彼女は、空の上でも人生においても、私にとって最高のパートナーです」

参考リンク:
ティティのInstagram
ティティのFacebook

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